●あなたの仕事に達成感はありますか
そう聞かれて、ちょっと考えました。世の中の仕事は実に千差万
別で、「達成感」という心のモノサシひとつでは測ることのできな
い世界もあると思うのです。たとえば私たちの仕事です。
管工事の仕事は、製品作りのように質量で表せる目標というもの
を持ちません。決められた工期内に計画どおりのライフラインをは
りめぐらせて、かつ、痕跡は残さず、何事もなかったかように元に
戻しておくというように、成果が隠れているのが完成形です。
しかもガスには万が一の間違いも許されませんし、管をつないで
ガスが流れだす瞬間、どんな現場にも必ず緊張の山場がやってきま
す。これをやり終えたとき、作業に従事した人だけがその緊張から
解き放たれて、ホッと一息つくのです。
●安堵感
それがこの仕事に見合った唯一のモノサシかもしれません。
私たちの仕事に興味を持ち、ともに志していく人には、まずはそ
れを知っておいてほしいのです。
そして長年の現場から一言付け加えるとするならば、この安堵感
こそが心の滋養になり、「あしたも頑張ろう」という糧に転化して
いく種なのです。
「あの地域の暮らしの一端は自分の仕事が支えている、あの店も
この施設もすべて」と、人びとの笑顔にふれながら、仲間はひそか
に胸を張ります。
汗まみれ、泥まみれで働く現場を世間の人はだれも知らない、で
もそれでいいのだと、経験を重ねることで受け入れていく心。もち
ろん会社は、働く人たちのそうした自負をすべて、処遇でもって受
け止めています。
世の中の暮らしが私たちの手で知らず知らずのうちに便利になっ
て、そして安全と安心がしっかりと保たれている証として、ふだん
私たちの存在は忘れられている。これこそが、この仕事の理想だと
考えています。
人々の暮らしを支える。大きなやりがいです。